【ネタバレなし】エヴァンゲリオンは初号機のカラーリングが決まった時点で「勝ったな。」「あぁ。」だった

こんにちは!色彩ヲタクの猫仮面(ねこかめん)です

2021年3月8日にエヴァンゲリオンシリーズの最終作と言われる『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が公開されました。

今日は社会現象を巻き起こしたエヴァンゲリオンのカラーリングの力について、色の知識が全くない方にも理解できるようにお話ししていきます。

この記事には『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』のネタバレありません
まだご覧になっていない方も安心してお楽しみください。

これを読み終わるとエヴァ仲間に「初号機のカラーリングあるやん?あれってさぁ、商業的にもうんぬんかんぬん…」と、ドヤ顔でうんちくを披露できるようになります。

小学生の頃からのエヴァファンで、現在は1級色彩コーディネーターとなった猫仮面がナビゲートさせていただきますので、安心してついてきてくださいね!

エヴァンゲリオンとは

アニメ版、漫画版、劇場版、新劇場版などのシリーズ作品が制作されている、言わずと知れた世界的人気作品です。

初めに制作されたのは1995年のアニメ版(全26話)。1997年に(旧)劇場版、そして2007年には新劇場版4部作のうちの1作目(序)が公開されました。

冒頭でもお話しした通り2021年3月、新劇場版4部作の最終作となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』がついに公開。日本中を湧かせています。

熱狂的な人気の理由

アニメ版放送時から「社会現象」と表現されてるほど熱狂的な人気ぶりで、ゲームや漫画を含むあらゆるメディアで展開されています。それと同時に多種多様なグッズも展開。

キリスト教をベースに複数の謎が絡み合い「誰かと話したくなる」「考察したくなる」など、1度見始めたらのめり込んでしまう魅力を持った作品です。

謎めきすぎて「なるほど、わからん。」と離脱する人も。他に類を見ない、独特な世界観なんですよね。

主役が乗るロボットが紫って

そもそもどうしてこんな色に?

シリーズの中でも最初の作品であるアニメ版。

その企画書が後に公開されているのですが、実は当初エヴァンゲリオンのベース色は紫ではありませんでした。

白だったんです。

でも「白い巨大ロボットだと、どうしたってパッと見ガンダムだよね…」とか「カッコイイね、この敵のロボット!」とか散々な言われようだったため、カラーリングを含めたデザインを練り直したそうです。

長い時間 画面に映るであろう主人公が乗る機体をから紫×黄緑へ。かなり大胆な決断だったはずですが、これこそ後に世界中の人から「エヴァの色」と認識されるようになる色。素晴らしいハンドリング!

色もガラッと変わったし、身体ももっとガッシリしていた物をかな~り細身にしたんだって。

公式グッズの制作や、作品の宣伝に不可欠な他社とのコラボ展開をスムーズに進めるためにも大きな役割を担う2色になったわけです。

主役の機体が紫であることの意外性

そもそも主人公の機体に紫をチョイスするってすごくないですか?

エヴァが大ヒットした今だからこそ「まぁあるかな」と感じますが、いやいや!よく考えてみてください。

子供達が大好きな戦隊ものでも主役は普通、赤だよねぇ…?

そう。主役といえばをメインカラーに採用する場合が多いです。

主役を赤にするのは色んな意味があるでしょうが、中でも重要なのが誘目性です。

誘目性(ゆうもくせい)…つまり無意識に人の目を引きつける性質が強いので、画面の中でどこにいても目に留まりやすいという正に主役のためにあるような色なんですね。

でもエヴァで選ばれた主役の機体は紫。

なんて普通、「敵の色」じゃね!?

って感じですが、その意外性が「唯一無二」の個性を印象づける鍵となったと言っても過言ではありません。

主人公、碇シンジの性格と初号機カラー

またという色はを混ぜてできる色としても知られています。

これが初号機パイロットであるシンジの

  • :外界に対して期待をしない、冷めた面
  • :心の奥底では愛を欲している面、父親や周囲の人に認めてほしいという欲求

にも感じられます。

今となっては「絶妙」と言えるカラーリングです。

色彩学の観点から見る色の役割

普段当たり前のように色に囲まれて生活していますが、私たちにとってどんな役割を持っているでしょうか。

大まかに分けるとこんな感じ↓

  • 対象を目立たせる、注意させる(例)赤い看板、踏切の黄色と黒
  • 区別、分類する(例)運動会の赤組・白組、アナログテレビの3色コード
  • 状態を伝える(例)肉の生~加熱、信号の赤・黄色・青
  • 心理効果を与えるイメージを伝える

今回特に重要なのは最後の項目です。

心理効果を与える、イメージを伝える(何かを連想させる)

色によって冷たそう・温かそうに感じたり(いわゆる「暖色・寒色」)があったり、重さの情報が書いてあるわけでもないのに重そうに見えたり軽そうに見たりする色があったりと、使い方によって人の印象をコントロールすることができます。

それに加えてといえばリンゴ・炎・郵便ポストといえば水や空など単色から連想されるイメージがあったり、2つ以上の色の組み合わせ(配色)だともっと細かいイメージを持たせることができます。

これはエンターテイメントだけじゃなくて、マーケティングの観点でも当たり前のように使われてるんだよね

色を見た時の反射的な連想は人によって違う

先ほど挙げた「赤といえばリンゴ」など多くの人の共通認識とは別に、個人的な趣味趣向が色の連想に大きく影響する場合があります。

こういうケースでは何てことのない色のカードを見ても、「大好きな何か」が反射的に頭に浮かんだりするもの。

  • あ、赤っ!!翔ちゃん!!(嵐のファン)
  • おっ、赤だ!!かなこぉ↑↑(ももクロのファン)
  • 赤ですね…ウルトラマンは私の青春です(特撮のファン)
  • えっ、赤じゃん。セーラーマーズしか勝たん(セーラームーンのファン)

これは赤という単体の色を例に挙げましたが、先ほどもお伝えした通り2色以上の色の組み合わせであればもっと強く、対象のイメージと繋がったります

初号機カラーを読み解くための色彩基礎知識

ここからはエヴァンゲリオンの中で一番印象的なカラーリングとも言える初号機の配色を探るべく、色の基礎知識に触れてみましょう。

※色の体系にはいくつかの種類がありますが、このサイトではPCCSを使用しています。日本国内で最もポピュラーな検定試験と言える、色彩検定でも採用されている体系です。

色の分類

色は大まかに有彩色(ゆうさいしょく)無彩色(むさいしょく)に分類することができます。

赤青黄緑など色合いを感じられる色を有彩色と呼び、それとは逆に白グレー黒など色合いを感じない色を無彩色と呼びます。

色相

赤、青、黄色のように、一番イメージしやすい色味の違い色相(しきそう)と呼びます。その色相が輪っかになっている図が、色相環(しきそうかん)です。

各色には番号が振られています。この番号によって、文字情報だけでも色相を特定することができる便利な数字です。

黄色なら「8」、青なら「18」、赤なら「2」って感じですね。「:」のあとの英語は色名の略で、例えば18の「B」はBlueの略です。

彩度

色の鮮やかさの度合い彩度(さいど)と呼びます。

どんな有彩色でも彩度を一番低くすると、無彩色(グレー)になります。ちなみに、彩度が一番高い色を純色と呼びます。

明度

明度とはその色が持つ明るさの度合いのことです。どんな有彩色でも明度を一番低くすると黒になり、一番高くすると白になります。

3属性を合わせた便利な「トーン図」

今まで説明した色相・彩度・明度が合体した、トーン図という便利な図が存在します。

1つ1つのトーンは彩度と明度の観点から同じようなイメージを持つ領域にある色をまとめたもので、意図を持って色を組み合わせるときにとても重宝します。

初号機の配色を分析する

初号機のカラーリングは補色(ほしょく)

初号機のカラーリングはとても鮮やかなのでV(ビビット)トーンと仮定しましょう(資料や使われるシーンによって見え方に多少バラつきあるので、仮定とします)。

初号機はよく見ると複数の色を細かく使用していますが、ここでは初号機のグッズなどで使用される代表的な2色、紫と黄緑の組み合わせについて考えてみます。

この2色をさっきの色相環上で見てみると…

ジャン!!

ぴったり円の反対側にありますね。この反対側に位置する色を「補色(ほしょく)」と呼びます。

使徒を…食ってる…!!おえぇえぇぇえ ※その捕食じゃありません

補色をつかうと起こる良いこと

  • 色相(赤、青などの)色味の差が強く感じられる ※鮮やかなトーンの場合
  • 派手で力強い印象を与えられる ※鮮やかなトーンの場合
  • コントラストが強調された配色になることがある

こんな印象を与えられます。補色はお互いを引き立てる美しい配色として有名です。

ちょっとでもデザインをかじったり、色について興味を持ったことがある人には良く知られている配色だね

補色の中でも特に明度に差がある配色

初号機はV(ビビット)トーンを使用しているとお話ししましたが、実は1つのトーンの中でも色ごとに少しずつ明度(色の明るさ)が違うんです。

各色が持っている明るさの情報はどうしたらわかるでしょうか…難しそうですが

いーや、これが超かんたん!!色相環をモノクロにすればイケる!!!

そう。色相環をモノクロにすれば、各色の明度がわかるんですね。

実は色相環の明度は上に行くほど高く、下に行くほど低いという性質を持っています。(PCCS色相環の場合。トーンによって高低の幅に開きがあります。

※画面で見ると微妙な差なのでわかりにくいかもしれませんが…心の目でどうかひとつ。

なので色相番号22の紫色相番号10番の黄緑を組み合わせは、1つのトーンで12パターンある補色の中で3番目に明度の差が大きいことがわかります。

初号機の黄緑がなんとな~く発光して見えるのは、ベース色である紫との明度差が関係していたんですね。

私もしかして目ぇ疲れてんのかなとか思ってたけど、むしろ絶好調だった件

アニメ作品が印象的なカラーリングを持つ利点

アニメ作品の中で印象的なカラーリングを作ることができると、ビジネス面、特にグッズ展開の観点でどんな利点があるでしょうか。

  • その作品に関する商品だと一瞬で認識してもらえる
  • 自社製品のカラーリングを変更するだけでコラボ商品になる
  • 「知らない人には気づかれない」を可能にする

その作品に関する商品だと一瞬で認識してもらえる

例えばエヴァのファンが街で紫×黄緑の組み合わせを見つけると「お、何かのエヴァコラボか?」と目が輝きます。その作品に関する商品だと、色の力によって一瞬で認識してもらえるというのは、大きなメリットです。

自社製品のカラーリングを変更するだけでコラボ商品になる

アニメというジャンルが成熟した今の日本では、アニメと企業がコラボ商品を発売して相乗効果を狙うことも少なくありません。エヴァンゲリオンなどの大きな作品ではこれが特に顕著で、ことあるごとにあらゆる業種とのコラボ商品を開発・発売しています。

ただどんな企業でも新しい商品を開発するには大変な労力がかかります。

そんな時その印象的なカラーリングをしたキャラがいたり、そのアニメの世界観を象徴する色があれば、コラボ企業は元々ある自社製品のカラーリングをアニメに寄せるだけでもコラボ商品を開発できます。

これは決して手抜きではなく

  • 完全な新規開発で商品のクオリティが下がるリスクを避けられる
  • スピーディーに開発ができる
  • 自社製品が持つ使用感をそのままに、新規の顧客に伝えることができる

というような、明確なメリットがあります。

そもそも企業はアニメ制作側に「何かしらのお金」を支払ってコラボをするわけです。新しい顧客を開拓できるチャンスとしてコラボに踏み切ったのに、商品のクオリティが下がり、自社の評判を落とすことは一番避けたいこと。そこで色の力が活きてくるわけです。

もちろんコラボのために0から商品を開発する企業も沢山あるよ!ただ業種によって開発期間や販売数量との兼ね合いが違う中で、カラーリングの力を使えば上手に立ち回れる場合も沢山あるよね。

「知らない人には気づかれない」を可能にする

エヴァのように幅広い年齢層のファンを持ったアニメ作品をモチーフにして、日常的に持ち歩けるグッズを制作するとき。重要になってくるのがグッズを使うファン、特に大人のアニメファンの「その作品を知らない人には気づかれない、さりげないデザインがいい」という心理です。

大人になればなるほど「そういう(アニメやキャラ物という)趣味の世界に理解を示さない人もいる、でも自分はこの作品が本当に大好きなんだ」というジレンマを抱える人が多いことを制作側には理解してほしいところ。

会社にキャラの顔イラストがバーーーン!って印刷されているグッズは持っていきにくいのよ…
いや、ダメじゃないんだけどね、もちろん会社にそんな規定はないんだけどさぁ…うーん…

そこで!

作品が持っている色の力が十分に発揮されれば、キャラクターを使わなくてもその作品のモチーフだとわかりますよね。つまり情報を削ぎ落としたデザインのグッズを作ることができるわけです。

そしてキャラを使わなくてもデザインが成立する=その作品に興味が無い人には「(単純に)こういうカラーリングなんだ」と流してもらえる(可能性が高い)。

これは2つ前の項目である「その作品に関する商品だと一瞬で認識してもらえる」と全く逆の観点です。途中でお話しした「個人的な趣味趣向が色の連想に大きく影響する」という話と相まって、その作品を知っている人と知らない人の間に、優しいATフィールドを創り出すことができるんですね←

シュッとした大人向けグッズ、ありがたいよね。
いくつになってもそっと持っていたいのよ、好きな作品のグッズ!!!

…ここまでお話しして何ですが、エヴァくらい大きな作品になるといくら控えめなデザインのグッズだとしても、特にエヴァファンではない人に「それエヴァなの?」とニッコリ聞かれてしまうという…人気作品特有のジレンマも存在します。まぁ、それだけ広く世間に浸透しているという事で…。

大人向けアイテムのお手本、RADIO EVA

突然ですがRADIO EVA(ラジオ エヴァ)をご存知ですか?

この「アニメ作品をモチーフにした大人向けグッズ」というカテゴリーの中で、RADIO EVAは頂点に立つ存在と言っても過言ではありません。

RADIO EVAとは「日常にとけこむエヴァンゲリオン」をコンセプトとして2008年に立ち上げられた、エヴァンゲリオンの公式グッズを展開するブランドです。「吉田カバン」「Lee」「Clarks」「Columbia」「FILA」などなど(書き切れない!)数々のブランドとのコラボ商品を生み出し、今までにない挑戦を続けています。

カラーリングや文章、シンプルなロゴなど、ごく限られた情報で世界観を表現できるエヴァンゲリオンという作品だからこそ成り立つブランドだと感じます。

今までターゲットとされなかった、女性向けの商品も多々ありますが、これもカラーリングのみでも世界観を表現できる作品だからこそできる展開ではないでしょうか。

ちなみに!

RADIO EVAのアイテムの中には世界中で愛されるイギリスの伝説的ロックバンド「The Beatles(ザ・ビートルズ)」のロゴをもじるように作られた「The Beast(ザ・ビースト)」の文字が印象的なグッズもあります。

ブランドのターゲット層である大人がニヤッとするようなモチーフとエヴァンゲリオンの世界観が絶妙なバランスで掛け合わされたグッズばかりなので、エヴァ好きな大人は是非ぜひチェックしていただきたいと思います。

いんやー、このあいだ特に買う予定もないのにRADIO EVAのブースにフラッと立ち寄ったらね、んもーーーかっこいいヤツとおしゃれなヤツしかなくてね、気づいたら財布からお札が羽ばたいていって…んあーっ!やらかしー!! でも満足ー!!! ※ここまで息継ぎなし

あ、そうそう。

大人向けに各社が本気出してコラボしている商品も多いため、お値段も大人向けなものが多いです。

どの商品もクオリティの高さは織り込み済みですが、自分のお財布とよーく相談してから足を運ぶことをオススメします。皆さま私の二の舞にはならぬよう…(遠い目)

今日の色彩知識

  • エヴァ初号機のカラーリングはアニメの企画段階では白だったが、最終的に紫×黄緑に。これが後に作品を連想させる重要な色になった。
  • 全く同じ色を見ても人によって連想するものが違ったりする場合がある。これは趣味趣向の分野で特に顕著に表れる。
  • 色には色相・彩度・明度の情報がある。そのすべてを合わせたものがトーン図
  • 初号機の配色は色相環で見ると相対する位置にある補色になっている。補色はお互いを引き立てる美しい配色として知られている。
  • 初号機の機体で黄緑の部分がなんとなく明るく見えるのは、紫との明度差が関係している。(目が疲れているわけではない)
  • 色だけでその作品だと理解してもらえるグッズを制作するときにキャラクターを描かなくてもデザインが成立する。このため企業コラボがしやすかったり、大人向けの商品を作りやすかったりする。
  • RADIO EVAはいいぞ…! エヴァンゲリオン公式が展開するRADIO EVAはアニメ作品モチーフでありながらオシャレな大人向け商品を数多く制作している。これも色の力が大きく関わっている。

かなりのボリュームになってしまいましたが、ここまで読んでくださったあなた。ありがとうございます。きっとエヴァが好きな方ですよね?私たちは仲間です…おめでとう(?)パチパチパチパチ…

と冗談はさておき。

今回は初号機のカラーリングに焦点を当てつつエヴァ全体の展開について考察しました。これでもかなり絞って書いたんです…はい…。

色の論理的な観点からエヴァ好きな方々と分かち合いたいトピックスがまだまだ沢山あります!これからも是非、遊びにきていただけると嬉しいです。

新しいエヴァ関連記事をUPする際にはTwitterアカウントでもお知らせいたしますので、そちらもよろしくお願いします。

それでは、猫仮面でした。エヴァはいいぞぉおおぉぉぉ!!

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