ピクサーの傑作、ソウルフル・ワールド。実は色の力が最大限に発揮された作品だった!【ネタバレあり・色彩考察】

ディズニー大好き!エンタメ色彩ナビゲーター、猫仮面です

今回はディズニー、ピクサーの長編映画『ソウルフル・ワールド』を色の観点から考察していきます。

「なんとなく見たけど、もっと深く考察したい」「他の人とは違う観点で作品を味わいたい」「一緒に見た家族や友達に、こんな知識あるんだぜ!とドヤ顔で話したい」と、こんな方に楽しんでいただける記事になっております。

ネタバレを含みますので、まだご覧になっていない方はご注意ください。

モンスターズインクの監督が送る新作長編映画

ソウルフル・ワールドは『トイストーリー』『モンスターズインク』『カールじいさんの空飛ぶ家』でも知られるピートドクター監督が送る、ピクサーの長編アニメーションです。

当初2020年6月にアメリカで公開されることが発表されましたが、コロナウイルスの影響により11月に延期。それに合わせて日本での公開も後ろ倒しに。

しかし最終的には劇場公開を中止し、2020年12月25日にディズニープラスでの配信が始まりました。

ディズニープラスのサービス対象外地域では、劇場公開に向けて調整が進められているとのこと

いやいやいや待って!かなり大事じゃない?

そうなんです。

これまでの説明でおわかりいただけると思いますが、『モンスターズインク』の監督が送る期待の長編新作が、劇場で見られなくなる代わりにディズニープラスで配信になったと。

しかも驚くべきことに、先日同じくディズニープラスで公開された実写版ムーランなど追加料金を払わなければ見られない新作もある中、これは普段の月額料金である770円(税込)の範囲で何度でも見放題なのです。

ここまでで「見ない理由がなくね?」と思う方も多いと思いますが、映像もストーリーも良すぎるわけで…。

ヤバい…(消える語彙力)

【結末あり】ソウルフル・ワールド、あらすじとネタバレ

ここから先はネタバレ、結末を含む記載があります。ご覧になりたくない方はご注意ください。

ジョー、夢はジャズミュージシャン

ニューヨークに住む非常勤音楽教師のジョーの夢は、ジャズミュージシャンになること。ある日学校で非常勤講師から正式な講師になる通達を受けますが、同じ日に元教え子であるプロドラマーのカーリーからバンドで演奏してみませんか?と誘いを受けます。

プロのミュージシャンだぞ!!と浮かれまくって、歩きながら電話を掛けていたジョー。道端のマンホールにストーーーーン!と落ちてしまいます。

ソウルの世界で22番と出会う

落ちた先はなんと、ソウル(魂)だけが存在する世界でした。ソウルの世界では生まれる前の魂が住んでいて、人間として生まれるために基本の性格決めがされたり、1人1人にあった「きらめき」探しをしているのだそう。

ソウルの世界には人生を終えた魂が、これから生まれる魂のきらめきを見つける手助けをして送り出すシステムがあることを知ったジョー。きらめきを見つけると、生まれるための胸の通行証が完成するようなのです。そこで出会ったのが「このままずっと生まれたくない」と願う魂、「22番」でした。

ジョーは22番の通行証を完成させてジョーに譲ってもらうことで、ジョーは現実に帰ることができ、22番は永遠に生まれなくてもよくなると提案します。22番も協力することにしました。

迷子のソウルを助ける活動をしているムーンウィンドの力を借りて儀式をした2人は、意図しない形で現実世界に飛ばされてしまいます。まぁしかしジョーにとっては一件落着…と思ったのもつかの間、ジョーの体には22番の魂が、たまたま居合わせた三毛猫の体にはジョーの魂が入ってしまうというちぐはぐな状態に。ジョー(22番)と三毛猫(ジョー)はニューヨークを縦横無尽に駆け巡りながら、お互いが正しく元の状態に戻る方法を探します。

ニューヨークで見つけたもの

ジョーが身体に戻れたらすぐにライブで演奏できるように身だしなみを整えたり、ソウルの世界からの追手から逃げたり、ジョーの母親に夢について説得を試みるうちに、22番は世界の素晴らしさに気づいていきます。

現実世界にいるムーンウィンドの力を借りて元の状態に戻ろうとしたところ、やっぱりソウルの世界に戻りたくない!!という22番が逃げ出します。しかし22番を追いかけたジョー共々、ソウルの世界から来た追手に捕まり、ソウルの世界に連れ戻されてしまいました。

ソウルの世界に戻ると22番の胸の通行証が完成していました。ジョーはその様子を見て「俺の体で体験しただけじゃないか!!」と怒り、22番はジョーに通行証を投げつけてどこかへ去ってしまいます。

完成した通行証を使って現実世界に帰ったジョーは、ライブを大成功させます。ですがライブが終わった後、想像していた世界と違っていることに気づきます。自分のきらめきはジャズ、プロミュージシャンになることが世界で一番素晴らしいことだったんじゃないのか?困惑するジョーは、22番がこの世界で何でもない小さな幸せを見つけていった時のことを思い出すのです。本当に大切なのは、自分が「そんなのただの生活だ」と言い放ったこと、そのものだったんじゃないか?

本当のきらめきは何か?生きる意味は?

もう一度22番に会いたいと願ったジョーは、ソウルの世界へ戻ります。そこには不安に苛まれて迷子のソウルとなり、モンスター化した22番の姿がありました。22番の心に語り掛けるジョー。「生まれていい」と伝え、ニューヨークの街で22番が目にして感動していた、ユリノキの葉っぱ(種子)を一枚手渡すのです。22番は元の姿に戻りましたが、同時に通行証も22番の胸に。ジョーはこのまま人生を終える事を静かに受け入れます。

22番が生まれるため、地球に飛び込むのを見届けたジョーは真っ暗な世界(死後の世界)に向かおうとします。しかしその途中でソウルの先生のような存在であるメンターに、22番を生まれさせてくれたお礼を言われ、もう1度現実世界に戻るよう促されます。

現実世界に戻ったジョー。その口角の上がった表情に、これからは日々の小さな幸せを見つめながら生きていこうという決意がにじんでいました。

色の性質をとても上手く使った作品

ソウルフル・ワールドは

  • 色の識別性
  • 色によるイメージの操作

とても上手く利用している作品です。

アニメーションは実写の映像と違って、何も無いところから作り始めるもの。考えてみれば、何に対してどんな色を指定することも自由です。

つまり「こういう風に感じ取ってほしい」というクリエイターたち意図を込めやすい表現方法と言えますし、その意図が色の面で最大限発揮されているのがこの作品の1つの特徴でもあります。

対極の色を使った2つの世界と、その外側

ソウルフル・ワールドの舞台は大きく分けて2つ。「現実世界のニューヨーク」と「ソウルの世界」です。

それに付随して、2つの世界の中間にあたるエリアが存在します。

  • 現実世界のニューヨーク
  • ソウルの世界
  • (中間)現実とソウルの間
  • (中間)ゾーン・悩み砂浜

各エリアではイメージ付けのため、またパッと見てその場所だと認識できるよう、使われる色がそれぞれハッキリと決まっています。

特に重要なのは、現実世界とソウルの世界のメインカラーが「補色」と呼ばれる相対する色であること。補色は全く反対の性質を持ちながらも、お互いを引き立て合う配色です。

色の概念を論理的に紐解く際に、上の図のように色の濃さなどを取り払った原色の輪を用いて解説することがあります。また当サイトで使用している色彩理論はPCCSという色彩体系に基づくものです。

それぞれ詳しく見てみましょう。

[ 1 ] 現実世界のニューヨーク

ニューヨークの街並みなので色んな建物や人が存在します。いわゆるマルチカラーで表現される世界です。

ですがいたるところにオレンジ~黄色が登場するため、自然と「ニューヨークはオレンジっぽい」とイメージづけられる構成になっています。

一番印象の強い色

ニューヨークの街中でオレンジが使われているものには

  • 木々の紅葉
  • 母の仕立て屋
  • 通りのあらゆる小物

が挙げられます。

この項目はストーリーにも大きく関わってくるので、後の項目でゆっくりお話しします!

地下鉄のシーンで寒色の代表色を使わない理由

オレンジがメインカラーではありますが、現代的なニューヨークを表すために地下鉄や建物にはそれぞれに合った色が使われています。

特に地下鉄の車内は殺伐とした空気感を作るために、温かみを感じるオレンジとはかけ離れた、グリーンをメインカラーとしています。

ここで湧いてくるのが、普通に考えれば暖色であるオレンジの対極の印象を作るのであれば、地下鉄の車内は寒色であるブルー寄りに作るはずじゃないのかな?という疑問。ブルーだったら地下鉄のシーンで表現される「冷たさ」も的確に打ち出せます。

ですが恐らく意図してグリーンを使用しているのでしょう。

それはこの後出てくるブルーをメインカラーにしたソウルの世界との徹底した棲み分けのためだと考えられます。

[ 2 ] ソウルの世界

ストーリーの中で現実世界のニューヨークと対極にあるのが、魂だけが存在するソウルの世界です。

こちらは現実のオレンジと色彩学的にも完全に対極の色であるブルーがメインカラーになっています。

ブルー(からライトグリーンの範囲)をメインに、アクセントに少量のピンク・紫が使用されています。

一番印象の強い(使われている範囲が広い)色

日本のポップカルチャーでいうところの「夢かわいい」に近い世界観だね

メンターたちを表す線

面白いのはソウルの世界で働く先生たち(メンター)を表す線が、白で描かれていることです。

一般的にアニメーションでは線は濃い色(黒に近い色)で描かれますが、現実世界との区別のために意図的に真逆の色を使用しているのでしょう。

浮遊感や軽さを表すことができますし、良い意味での現実味の無さ打ち出すこともできます。

[ 中間その1 ] 現実とソウルの間

一番最初にこのエリアが出てくるのは、導入部分でジョーが電話をしながらマンホールに落ちたシーンです。

ここは現実世界とソウルの世界の間の空間で、「何もない」ことを表す場所でもあります。

真っ黒な世界に白い線(とソウルの状態になった主人公)で描かれる、他に何も情報がない世界です。

黒と白というのは色でいう所の無彩色。赤青黄色などの色相の情報を持たず、明るい~暗いだけの情報のみで作られています。

いわゆるモノクロ、とかモノトーンね!

このモノクロの世界を経由するからこそ、現実世界もソウルの世界も色がより鮮やかさに見え、画面のメリハリをつけるためにも重要な空間だと言えます。

[ 中間その2 ] ゾーンに入っている時

物語の中で「人間はものすごく何かに集中すると、他の場所にいるような感覚になるでしょ?ゾーンに入るってヤツ。ここがそのゾーン。肉体と精神の間の空間よ」と22番が説明してくれているように、集中している(生きている)人間が入ってくる空間です。

紺色の空間でブルーの光に包まれているため、パッと見の印象はブルー。ですがそこにアクセントとして鮮やかなピンクの光が舞っています。

このブルーと鮮やかなピンクが物語の中でゾーンの象徴として描かれています。

このキラキラしながら舞っているピンクがすごく綺麗なんだよね~!

あらゆるシーンで見られる色の明確な「役割分担」

紅葉するニューヨーク

ストーリーを進行する上でも重要な、ニューヨークの紅葉。ユリノキと呼ばれる葉っぱだと推測されます。

現実のニューヨークの街を歩く際に木々が紅葉していることで自然とオレンジが目に入って、オレンジを印象付けるための押しつけがましさがありません。

あのクルクル落ちてくる葉っぱ(種子)、本物を見てみたくなったよ

オレンジだらけ!母の仕立て屋

街中よりももっとオレンジが印象的な場所が、母の営む仕立て屋の店内です。

店内では

  • オレンジ寄りの木目調インテリア
  • 暖色の照明
  • 母親が着るトップス
  • 従業員のコート

…とまぁ、いたるところがオレンジ。そしてこの店内で夢を捨てずにいるジョーに苦言を呈しまくるのです。

ジョーにとって母親はまさに、現実を象徴する存在として物語の中で重要な役割を果たします。

それもこれも、もちろん母の愛から来ることなんだけどね~っ!くぅっ!

母との話し合いのシーンで示されるもの

物語の終盤、母親の仕立て屋の中でジョーと母親が今後について話し合うシーン。ジョーと母親の真ん中にカメラがあり、セリフを言っている方を順番に映しながら進行していきます。

母親を映しているショットでは着ている服に加えて照明までがオレンジでで、画面全体を覆っています

一方でジョーを映すショットは、窓から差している陽の光によって自然な色を保って見えます。極端なほど画面がオレンジに埋まる母親のショットとは真逆の印象です。

これが現実を突きつける母と、この時初めて自分の本心をさらけ出すジョーの対比になっています。

最も印象的なのは、本音をぶつけ合っていく中でジョーの強い想いを聞いて心を動かされた母親が、ジョーの方にすっと歩み寄ったシーンです。

立ち位置が一歩ジョー側に入ったことで、母親を照らしていたオレンジの照明から抜け、ジョーと同じように自然な太陽に照らされます。その自然な光の中で母親が「わかったわ」という笑顔を浮かべる。ジョーの真っ直ぐな言葉がオレンジ色の現実を打ち破った瞬間が色でも表現されているシーンでした。

よく考えられている、猫の配色

ストーリーの中で一番長い時間を占めるのが、主人公の2人がニューヨークの街中を駆け回るシーンです。

主人公ジョーの身体の中に22番が、猫の中にジョーのソウルが入っている状態ですね。

ジョー(中身は22番)の服の色にもシーンごとの意味が強く込められていますが、同じくらい注目すべきなのが猫のキャラクターデザイン(配色)です。

最初にお伝えした通り、アニメーションなので基本的には0から作るもので、猫の色だってなんでもいいわけです。例えば

  • セーラームーンのルナみたいな黒猫
  • ロシアンブルーみたいな青みがかったグレー
  • ベースが白で顔や耳が濃い茶色のシャム猫

のような見た目にすることも…とにかく選択肢は無数にあります。

そんな中で実際に選ばれたのが黒・白・オレンジの3色でできたいわゆる「三毛猫」です。

これが絶妙なんですよね~!

猫はニューヨーク(オレンジがベースの世界)にしか出てきません。

  • ある程度、街並みに溶け込むためのオレンジ
  • 最も明るい色である白
  • 最も暗い色である黒

これを合わせ持ったデザインにすることで、街を縦横無尽に駆け回っても浮くことがない、しかし目に入ってきやすい配色になっています。

白と黒には誘目性という「目を引く効果」はありません。ですが街中に真っ白と真っ黒な物を配置しないことによって、ハッキリとした色である白・黒が目に入りやすくなっています。

現実の中に出てくる紺色のアイテム

現実のニューヨーク中で

  • コリーの帽子
  • 床屋さんのシャツ
  • ジョーの父が着ていたスーツ

この3つは濃いブルー(紺色)で描かれています。ストーリー上の役割を考えてみるとこのアイテムにこの色が使われたことは偶然では無いはずです。

身につけている3人は、自分のやりたい事、やるべきことに向き合いながら生きている象徴的なキャラクターとして描かれています。

紺色という色について考えてみましょう。ソウルの世界のベースである青、その明度(明るさの度合い)を低くした色=青を暗くしたのが紺です。

青と紺は明るさが違うだけで元々は同じ色。ソウルから生まれている色だとも解釈できますね。

この紺色は「現実世界でも自分のソウルのきらめきとバランスを取りながら生きていくことができること」を訴えかけるのではないでしょうか。

今日の色彩(とソウルフル・ワールド)知識まとめ

  • ソウルフル・ワールドは、ピクサーが超人気作品を監督したピートドクターの新作(だけどディズニープラスで追加料金なしで見られる※2021年5月現在)。
  • 色の性質をとても上手く使った作品。
  • 現実世界はオレンジ、ソウルの世界はブルー、その間の世界は黒というように、パッと見てどの世界にいるのか分かりやすい配色になっている。
  • 特に現実のオレンジとソウルのブルーは、補色と呼ばれる真逆の性質の色。パッと見て違いがはっきりわかり、お互いが鮮やかに見える。
  • 物の配色も良く練られている一方で直感的に理解できるメッセージが込められている(猫のオレンジ・白・黒や、コリーの帽子などの紺色など)。

いや~、とても良い作品でした…。

中々書ききれませんでしたが、色と関係がないところで言えば最初と最後のシーンがジョーの顔のアップになっているところも良かったです(最初と最後で表情が180度違う)。

その他にも細かい部分までよく作りこまれていましたね~。改めて劇場の大きいなスクリーンで見てみたくなる作品でした。

それではまた次の考察で!

エンタメ色彩ナビゲーター、猫仮面でした!

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