【美女と野獣】ベルの黄色いドレスは希望の象徴だった
こんにちは!色彩ヲタクの猫仮面です。
良作が多いディズニー映画の中でも不動の人気を誇る美女と野獣。
私は英語・吹き替え両方でセリフが言えるくらい美女と野獣が大好きで、この作品の作曲家であるアランメンケンと、作詞家のハワードアシュマンを神の化身だと信じて疑っておりません(危ない)。
そんな美女と野獣 過激派(?)× 色彩ヲタクの猫仮面が、ボールルームのダンスシーンで印象的な黄色いドレスについて考察します。ほぼすべてのポスターやDVD・Blu-rayのパッケージにも描かれているあの黄色いドレスです。
ちなみに考察の都合上ネタバレを多く含みますので、万が一「作品を見る前にこの記事にたどり着いてしまった!」「ネタバレは駆逐!!」というあなたは残念ながらここでサヨナラです…。
しかし!!きっと縁があって見つけてくださったんだと思うんですよ。
是非ブックマークとかLINEキープとか、その辺にある紙にメモして冷蔵庫に貼っておくとか、何かしらの方法ででこの記事の事を覚えていてくださると嬉しいです。映画を見たら是非戻ってきてね!語り合おうぞ!!!仲間が欲しい!!!←
もくじ
そもそもディズニー映画「美女と野獣」とは
1991年に制作、日本では1992年に公開されたディズニーの長編映画。
フランスの民話である『美女と野獣』がベースになっていますが、制作された現代の時代背景であったりディズニーらしい解釈が加わることで、民話とは設定やストーリーが大きく異なります。
アニメーションでありながらミュージカルと言っても過言ではない構成になっていて、そのテーマソングや挿入歌のすばらしさも人気の理由です。
アニメ映画としては初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされていて、作曲賞と歌曲賞を受賞。
日本公開の翌年1993年にビデオが発売された際には、日本で初めてなんと100万本を出荷した大人気作品です。
ビデオを買うということは「お金を出して繰り返し見たい作品」という気持ちに現れとも言える。それが100万本なんだからその凄さがわかるよね。
2017年には待望の実写映画化され、こちらも大きな話題になりました。
ベルが着る黄色いドレスの美しさ
ポスターやDVD・Blu-rayのパッケージはもちろん、美女と野獣のありとあらゆるビジュアルに登場するのが、女性主人公のベルが黄色いドレスを着ている姿です。
これは物語の山場であるボールルーム(舞踏室と呼ばれる大きな部屋)で、ベルと野獣がダンスを通して一層心を通わせていく重要なシーンで出てくる着用されるドレスでもあります。
ベルは物語の中で何度か衣装チェンジがありますが、黄色がモチーフの衣装はこのシーンと大団円であるエンディングのみなんですよね。
物語序盤で不幸のどん底に落とされたベルが、ボールルームで幸せそうな笑顔を見せる瞬間はもう…胸熱ですわ…
色彩理論から見る黄色の特徴
この重要なボールルームのシーン。映画の製作陣はなぜベルに黄色いドレスを着せたんでしょうか。
「そりゃ綺麗だからだよ」って感じですが、ここは一歩踏み込んで色彩学の観点から考えてみましょう。
黄色は明度が高い色
ここに色んな色がありますが、これを分類けすると
白グレー黒のように鮮やかさの無い色である「無彩色」と、赤青黄緑のように色味がある「有彩色」の2つグループを作ることができます。
黄色は鮮やかさがあるので「有彩色」に分類されるんですね。
そして全ての色には「明度」と呼ばれる明るさの度合いが存在します。有彩色をモノクロに変換すると、その色が持っている明るさがわかります。
黄色は有彩色の中で、一番明るい色(明度の高い色)なんですね。
見る人に与える印象
黄色が人に与える印象を考えてみましょう。
黄色は見る人に「元気」「希望」「無邪気さ」「軽快さ」といったポジティブな印象を与える色です。
どのワードも魔法をかけられてしまってからの薄暗い城の中とは真逆のイメージですね。
黄色から連想されるもの
色を見ると連想される物体や事柄があるものです。
先ほど黄色は有彩色の中で一番明るい色であることご説明しましたが、それと連動するように
- 明るさ
- 光
- レモン
- 信号
…など、主に「明るさを感じるもの」を連想することが多い色です。(連想されるものはまだまだ沢山ありますが、一旦この辺で。)
絵本などでも太陽の表現がオレンジ~黄色あたりだったりするのがその表れだと言えます。
ツルツルテカテカに光らせるとあの色になる
色を見るためには、物体に光が当たってそれを目で受け取ることが必要になります。
物がザラザラしているのか、ツルツルしているのかなど、表面の状態でも色の感じ方は大きく違ってくるものです。
はい!突然ですがここで問題です!!
黄色くて丸い物体を、覗き込んだ自分が映り込むほどツヤッツヤ、光沢をもったキラッキラな状態に磨き上げると何色に見えるでしょう。
そうです、金色に見えますね。
黄色は金色のもとになる色で、華やかさのある色であることがわかります。
劇場公開時にカットされた11分間にヒントがある
さて。映画の話に戻りましょう。
実は美女と野獣には初めて劇場公開された際にバッ………サリとカットされた幻のシーンがあることをご存知ですか?
そのシーンというのが『人間に戻りたい』という楽曲で、これは魔法によってお城の家具や食器に姿を変えられてしまった召使い(めしつかい)たちが「もしも人間に戻れたらこんなことがしたい」と代わる代わる歌うシーンでした。
しかも元々この楽曲があったのは、あの黄色いドレスが出てくるボールルームのシーンの直前なんです。
城ごと魔法をかけられたまま何年も辛い日々を過ごした召使いたち。ベルが来てからというもの「ご主人様がベルと愛し合うことができれば、私たちの魔法も解ける!」という期待を膨らませ続けて、その想いを爆発させたのがこのシーンでした。そしてその直後、あのダンスシーンに突入するわけです。
『人間に戻りたい』があるバージョンで映画を見ると、ダンスシーンで「この2人、上手くいってくれえぇ…!!」と願う気持ちが段違いに強くなります、マジダンチだからほんと←
ベルは野獣だけでなくお城で過ごす全ての人たちの希望を一心に背負った存在なんですね。
こんなところから、あの輝くような黄色いドレスは「ベルが希望の象徴」であることを表していると解釈できます。
黄色いドレスをより印象的にする仕掛け
一度映画を見るとベルのドレスの色はとても強く記憶に残ります。この印象の強さは他のディズニープリンセス作品と比べても群を抜いていると感じます。
その理由は映画の中であのドレス(あのシーン)のに行きつくまでの色彩設定が計算しつくされているからで、主にこの2つがポイントになります。
- 黄色を他のキャラクターのイメージカラーにしない
- ボールルームのシーンは使用する色の幅がかなり抑えられている
他のシーンで黄色を大写しにしないために
思い返してみれば美女と野獣に出てくるキャラクターの中には、黄色をイメージカラーに持つ主要キャラクターは存在しません。
町のシーンでは柔らかい黄色の服を着ている脇役キャラこそいますが、ベルのドレスのような輝く黄色を着ているキャラはいないんですね。
主要キャラクターに黄色を着せてしまうと、そのキャラがセリフを言う時に画面に大写しになる=画面の大部分を黄色が覆って、ボールルームのシーンにたどり着く前に黄色のイメージがついてしまうことになります。それを避けるためにハッキリと線引きしてキャラのカラーリングを設計しているのでは?と考えられます。
限られた色で完成された美しい空間、その中で輝く黄色
さて一番重要なボールルームのダンスシーンですが、画面全体を広く見てみると気づくことがあります。
それはかなり限られた範囲の色で構成されているということ。
野獣のタキシードは青、ベルのドレスは黄色。
壁や大きな柱のベースは黄色~オレンジをかなりくすませて柔らかくした色味でできていて、壁の装飾や床に使われているのは落ち着いたオレンジ(金~銅を連想させるような色)です。
2階の吹き抜け部分から部屋をグルッと一周囲んでいる布の装飾は、野獣のタキシードの色と同じですね。
なので基本的には
- 黄色
- オレンジ
- 青
がベースです。
こうしてかなり限られた範囲の色をピックアップし、少し暗くしたり(明度を下げたり)、くすませたり(彩度を下げたり)しながら指定色の範囲を外れないように設計。こうすることで画面全体の印象を統一しています。
そうして作られた空間の中で一番目を引くのが明度の高い黄色を配色したベルのドレス。そこに野獣が着ている落ち着いた青いタキシードが寄り添います。
ちなみに…あのシーンには別バージョンが存在する
ボールルームのシーンでカメラが天井に向かってなめらかに移動したり、シャンデリア越しに2人が躍るカットなどはCGで創られていますが、当時はCGをアニメーションに使用した前例がありませんでした。世界初の試みだったんですね。
このカットは公開ギリギリまで調整を続けていたそうで、もしCGでの表現が完成しなかった時のためにセルのみで作ったバージョンも存在したとか。もちろん制作過程でのお話しで一般公開はされていないのですが…。
世界中のファンが喉から手が出るほど見たい映像の1つではないでしょうか。
ボールルームのシーンの別バージョンとか!!いやー、見せてくれたっていいんですよディズニーさん!!
今日の色彩知識
というわけで今回は有名なボールルームのダンスシーンで着ていたベルの黄色いドレスに関する考察を中心にお話ししました。
- 黄色は有彩色(鮮やかさのある色)の中で一番明るい色。
- 黄色は軽快さ、光、希望を連想させる色。
- 色は物のザラつきや光沢など表面の状態でも印象が変わる。黄色に光沢を与えると金色になる。
- 使う色の範囲を決めて配色をすることで、統一感を持たせられる(基本の色の数は少ない方が良い)。色の明るさや鮮やかさをコントロールすれば、対象を目立たせることもできる。
- どうしても印象付けたい色がある場合、物語の中でその色をどう使うか(どう使わないか)を考えると良い。
美女と野獣にはこれ以外にも、色彩学の観点から考察するとものすごくたくさんの発見があるなんですよ。これからも美女と野獣関連の記事をいくつかアップする予定なので、是非また読んでいただけると嬉しいです。
それでは!色彩ヲタクの猫仮面でした。
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